ペプシ派

初めてコカコーラを飲んだ時のことを思い出すと、胸が踊る。僕の中ではどんな初体験よりもコカコーラを初めて飲んだ時が一番衝撃的だった。祖母に「骨が溶けるぞ、飲むと骨が溶けるぞ、」と言われながら飲んだこともその刺激的な体験にさらなる刺激を与えた。散々今まで飲まされたどんなジュースよりも甘いのにただ甘いだけじゃなくて妙に癖になるドラッグのような味がした。飲んでも骨が溶けなかったので「骨が溶けないじゃん!!!」と祖母に怒った。祖母はそれを見て笑っていた。僕が「美味しい!!!」と喜んでいると前の助手席に座っていた父が僕のコーラを取って飲み干した。「ああ。」みたいな気持ちになった。僕は幼い頃から飽きるほど美味しいものを食べさせられていたせいか、食べ物に対する執着がまるでなくて、何か自分のものを食べられたりしても感情が変化しない。父はやったと言わんばかりの表情をしているのだけど、僕はそこまで悲しくもなかったので無表情で父を見ていると変な空気になって「あっ父やっちまったな〜」みたいな雰囲気になりかけたので「わ〜僕の〜」ととりあえず言ってみたらその車内の空気は保たれたのでよかった。行った場所だとか食べたものだとか、以前それを誰と行き誰と食べたのかとかをその場所に行くたびにそれを食べるたびに思い出してしまって、それは嬉しくもあるけど同時に人にものに対する新鮮な印象を食いつぶされているような気がしてしまって、嫌なんだけど多分好きな人に食いつぶされれば快感なんだと思う。だからみんな恋人とかとあんなに出かけたりするのか〜なるほどみたいな気持ち。